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複式簿記で見えてきたこと | 会計ソフト RingoKeiriTien 
フリーランスの仕訳の豆知識
2008-10-27
Work
経理, 複式簿記

開業して間もないころ,複式簿記での「仕訳」のしかたがわからなくてちょっと困ったものをいくつか紹介してみます。個人事業主として確定申告する方むけです。
複式簿記で見えてきたこと とあわせてご覧いただくとわかりやすくなると思います。
あちこちで少々かじった知識ですし,法改正なども行われていますので,不適切なところがありましたら,ご指摘ください。
事業主貸
帳簿上は,仕事をしている自分とそれ以外の自分は別ものです。預金口座も仕事用と個人用のものを持っています。仕事では「屋号」を名のり,領収書などにも屋号を書いてもらいます。で,仕事ではない自分,屋号のついていない自分,つまり私人たる自分を,会計上では「事業主」と言います。
「100,000円の制作費が入金された」というとき,入金されたのは仕事用の口座になります。これはまだ,ぼく個人が生活費や遊びに使えるお金ではありません。いわば給与のようにして,ぼくが受け取ったとき,初めてぼく個人のお金になります。
仕事用のお金を事業主のものにしたとき,仕訳では次のようになります。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 03-15 | 事業主貸 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
「事業主貸」とは,事業主に貸す(渡す)ことです。
事業主借
事業主が,仕事のためのお金を補填するというふうなこともあります。この場合は「事業主借」,つまり事業主から借りる(もらう)ということになります。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 04-10 | ソフトウエア費 | 94,500 | 事業主借 | 94,500 |
ソフトウエア購入分を事業主が補填したことになります。
「事業主貸」の総計から「事業主借」の総計を差し引いた分が,実質的に事業主が受け取った給与ということになります。
仕事に合わせて科目を作る
固定資産の中に「ソフトウエア」「工具器具備品」という科目があります。ソフトウエアやハードウエアを購入した際,10万円以上のものは固定資産にします。ふつう,10万円未満のものは「消耗品費」として処理します。
が,ぼくの仕事の性質上,10万円未満のソフトウエアやハードウエアを購入することはよくあるので,この金額を把握しやすくするために,「ソフトウエア費」(「費」をつけておかないと固定資産の「ソフトウエア」と区別がつかなくなる)「ハードウエア費」という科目を設けました。
もうひとつ「システム使用費」という科目も作りました。レンタルサーバーやドメイン,インターネット接続,有料のWebサービスなどを利用するための費用です。
電気料等
SOHOでやっている場合,家賃・電気料・水道料・ガス代などは,仕事で使っている分と,個人で使っている分がある,ということになります。常識的に考えて妥当な割合で仕事分と個人分に分け,仕事分は経費にすることができます。
たとえば電気代の50%は仕事分というふうに。
| 借方 | 貸方 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 | 備考 |
| 04-20 | 水道光熱費 | 3,251 | 事業主借 | 3,251 | 3月電気料 6,502 × 50% |
貸方が「事業主借」となっているのは,事業主の個人の口座から,仕事分と個人分をまとめて引き落としてあるからです。
仕事用の口座から引き落とす場合は,次のようになります。
| 借方 | 貸方 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 | 備考 |
| 04-20 | 水道光熱費 | 3,251 | 普通預金 | 6,502 | 3月電気料 6,502 × 50% |
| 事業主貸 | 3,251 | ||||
引き落とされた6,502円のうち3,251円が電気料,残りの3,251円は事業主の分ということです。
Suicaを使う
3,000円をチャージして往復の電車賃210円×2を使った,という場合。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 05-10 | 旅費交通費 | 3,000 | 現金 | 3,000 |
と,チャージしたときに旅費交通費として処理することもできますが,実際に使ったのは420円で,まだ2,580円の残があることがわからなくなってしまいます。
| 借方 | 貸方 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 | 備考 |
| 05-10 | 仮払金 | 3,000 | 現金 | 3,000 | Suicaチャージ |
| 05-10 | 旅費交通費 | 210 | 仮払金 | 210 | ○○駅-△△駅 |
| 05-10 | 旅費交通費 | 210 | 仮払金 | 210 | △△駅-○○駅 |
Suicaにチャージした3,000円をとりあえず「仮払金」として処理します。(仮払金は流動資産の科目になります) そこから往復の電車賃を支払います。こうしておくと,Suicaの残高も資産として扱えるようになります。
仮払金というのは,出張などに行く従業員に「とりあえずこれだけ渡しておくから」というふうなお金で,期間を置かずに,使途がはっきりしたところで処理しなければならないものです。長期間,仮払金のままだとよくありません。
そこで,仮払金でなく,流動資産のところに「電子マネー」というふうな科目を立てて処理するのもよいかもしれません。
| 借方 | 貸方 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 | 備考 |
| 05-10 | 電子マネー | 3,000 | 現金 | 3,000 | Suicaチャージ |
| 05-10 | 旅費交通費 | 210 | 電子マネー | 210 | ○○駅-△△駅 |
| 05-10 | 旅費交通費 | 210 | 電子マネー | 210 | △△駅-○○駅 |
電車賃を経費にするためには,どこに何の目的で行ったかが明確にできなければなりません。Suicaの利用明細をとっておくとよいでしょう。原則的には,仕事用のSuicaと私用のSuicaを使い分けるようにして,誤解を招かないようにしておくのがよいと思います。遊びに出かけたのだけれど,うっかり仕事用のSuicaを使ってしまったというふうなときは,
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 05-15 | 事業主貸 | 320 | 電子マネー | 320 |
と処理します。
源泉徴収税の扱い
制作費の10%を源泉徴収税分として差し引かれる場合があります。このときの仕訳は次のようになります。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 05-31 | 普通預金 | 90,000 | 売掛金 | 100,000 |
| 事業主貸 | 10,000 | |||
売掛金100,000円のうち10%差し引かれた90,000円が入金されて,10%は事業主貸となります。税金を納めるのは事業主です。この10,000円は事業主に渡った分が納税されていることになり,この手続を取引先で行ってもらったということです。
年末に取引先から「源泉徴収支払調書」(発行者によって名称は若干異なるかもしれません)というのが送られてきますので,これを保管しておきましょう。確定申告の際,納税すべき額からすでに納税済みの分を差し引くことができます。調書は納税済みの証明書の役割を果たします。
売掛金を回収できなかった
相手先の倒産などの理由で,売掛金が回収できなかった場合は「貸倒損失」として処理します。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 12-31 | 貸倒損失 | 52,000 | 売掛金 | 52,000 |
元入金の算出
「元入金」というのは会社で言う「資本金」にあたります。事業主が仕事のために用意したお金で,毎年の利益が加算されていきます。期首(年度初め。個人事業主の場合1月1日)に計上して期末(年度末。個人事業主の場合12月31日)まで変動しません。
繰り越した資産と負債を元にして,
元入金 = 資産総額 - 負債総額 ...A
あるいは,前期末の決算を元にして,
今期元入金 = 前期元入金 + 前期青色申告特別控除前の所得金額
+ 前期事業主借 - 前期事業主貸 ...B
と計算します。

複式簿記で見えてきたこと にある「試算表」を上下に分けると「貸借対照表」(BS:Balance Sheet)と「損益計算書」(PL:Profit and Loss Statement)ができます。BSのほうはお金(証券・固定資産・債権・債務などを含めた)がどのような形であるかを表しています。PLのほうは期間内のお金の動き(出入り)を表しています。
Aの計算式はBSから算出するものです。Bの計算式は前期のPLから利益を算出し,元入金に加算するものです。収益から費用を差し引き(青色申告特別控除前の所得金額),さらに事業主に渡った分を差し引いたものが,事務所(店)に残った利益ということです。
会計ソフトを使っている場合,元入金は期首処理で金額だけ入力すればいいようになっています。または,前期からの繰越処理をすれば自動的に計算されます。
減価償却
147,000円で購入したパソコンは耐用年数4年の「固定資産」になります。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令 で,耐用年数が定められています。
まず購入した時点で。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 04-05 | 工具器具備品 | 147,000 | 現金 | 147,000 |
「工具器具備品」は固定資産の科目になります。費用(経費)にはなりません。そのかわり,毎期末ごとに使った分だけ費用として償却する処理をします。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 12-31 | 減価償却費 | 27,562 | 工具器具備品 | 27,562 |
減価償却費は次のように計算します。(個人事業主は特に申請しない限り「定額法」で算出する)
購入価格 ÷ 耐用年数 = 147,000 ÷ 4 = 36,750円
または
購入価格 × 償却率 = 147,000 × 0.25 = 36,750円
となります。定額法の償却率も
減価償却資産の耐用年数等に関する省令 に定められています。耐用年数の逆数になっています。
でも,パソコンを購入したのが4月だったので,今期は9ヶ月,つまり0.75年分(9ヶ月 ÷ 12ヶ月)しか使っていません。そこで,今期の減価償却費は
36,750 × 0.75 = 27,562円
とします。
翌期,このパソコンの帳簿上の資産価値(簿価)は,購入価格から減価償却分を引いた 119,438円(= 147,000 - 27,562)になります。翌期の期末にまた,減価償却します。今度は丸一年使いますから,減価償却費は36,750円です。
購入から4年目の期首には簿価が9,188円になります。その期末に36,750円の減価償却はできませんから,1円だけ残して,9,187円を減価償却します。1円を残すところがポイントです。残存価額といって,耐用年数が過ぎてもまったく価値がなくなるわけではない,ということなのです。
この算出方法は,平成19年4月1日以降に購入したものに適用されます。(法改正によって計算方法が変わった) それ以前に購入したものは,1年間の減価償却費を,
減価償却費 = 購入価格 × 0.9 × 償却率
と計算します。購入価格の90%を減価償却していくということで,10%が残存価額となります。
今年の4月に開業したのだけれど,前から使っていたパソコンで仕事をしている。という場合も,購入から4年が過ぎていなければ,固定資産として減価償却できます。開業時の簿価を算出して,固定資産の工具器具備品として計上します。今期末には4月から12月の0.75年分を,翌期からは1年分を減価償却していきます。
開業費
4月に開業して仕事を始めたけれど,それ以前に準備のための出費をしているというときは「開業費」として計上できます。
「開業費」は繰延資産の扱いになります。費用(経費)にはなりません。そのかわり,5年以内の定額法で償却して経費とします。固定資産の場合と似ています。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 03-10 | 開業費 | 136,500 | 事業主借 | 136,500 |
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月日 | 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 12-31 | 開業費償却 | 136,500 | 開業費 | 136,500 |
この場合,期末に一括償却したことになります。
年度をまたいでいる場合も,前年度の出費を開業費とすることができます。
「独立して開業しようかな」とお考えの方は,仕事に関連しそうな出費をしたら,領収書などを保管しておくことをおすすめします。
固定資産や繰延資産の償却について
繰延資産には開業費の他に開発費や試験研究費などが含まれます。ある年度に大きな設備投資をしたとか,開発・研究に力を入れたとすると,その年度の出費はいつもより大きなものになります。通常の売上があり,今後収益を上げる可能性も十分あるのに,その出費のために,計上した利益が極端に少なくなるとか赤字になるということも起こります。これでは,経営の実態を正しく伝えられません。
設備投資の場合,購入した機械工具は数年にわたって利用され,売上を生みます。研究・開発の成果は徐々に現れ,数年にわたって活用されるものです。機械工具の生産性や研究・開発の成果を一度「資産」とし,その出費を数年に分けて経費とすることで,経営状態をできるだけ正しく伝えようとするのが「償却」という考え方です。
